連載-12- なるほどこれでなっとく!「著作権」写真
スペイン知的財産事情
この原稿は、スペインと日本間の知的財産権を専門に扱う法律サービス会社であるリーガルスタジオ社の真覚久美子氏とカルロス・アバディン氏(弁護士)の著作です。
連載-12- なるほどこれでなっとく!「著作権」 写真
No.259 Septiembre 2008
有名人がプライベートな写真をマスコミで使用するために億単位のお金を要求することがありますが、この場合は人物の肖像権。写真の著作権とは、写真を撮った時から撮影者にできる権利。著作権法は国によってまちまちですが、ここでは全般的な視点でこの権利が私たちの日常に、どのように関係があるかを説明します。
本・新聞・雑誌・彫刻・建築作品・写真・ポスター・地図・広告・映画・演劇・ダンス・宝石・玩具などの著作権によって保護されている作品の全部及び一部の写真を撮ることは、作品の複製をすることになり、著作権侵害になるので事前の許可を求める必要があり、無断に使用すると、損害賠償や裁判費用を請求される可能性があります。
また、写真作品の複製・デジタル化・コピ-・デジタル作品の複製・コラージュを作る・写真に着色など新たな要素を加える・芸術家の写真を撮りギャラリーに展示する・絵葉書にする・ウェブで使用する・メールで送るといった行為も事前の許可が必要です
ではどのような場合には自由に使うことができるのでしょう?詳しくは確認が必要ですが、一般論としては次のような例が挙げられます。●公衆の場に建つ建築物を写真に撮って発表、配布する。●公衆の場に常設されている芸術作品。ただし許可の必要がないのは、彫刻や伝統工芸品で、壁画や絵画は一般的に許可が必要です。●新聞記事などのデイリーニュースを補足する写真。この場合は作者と作品名を表示する必要あり。●引用または批評に付随する写真。この場合も作者と作品名を表示する必要あり。●保護されている作品の写真をその作品の販売のために使用する。●保護されている作品を背景にした写真。これはこの作品があくまでも付随的な場合で、例えば政治家の集合写真の背景にピカソの絵が写っているというような場合です。しかしこのような写真を売る場合は許可が必要です。●私的な写真は、一般的にプライベートな範囲で楽しむために使用し、インターネットやその他のマスメディアを使わなければ大丈夫です。
最も一般的な著作権侵害は、派生作品です。これはオリジナルの作品を基に新たな作品を作ることで、多くの場合このような行為は作品のイメージや評判、そして作者の名誉を傷つけています。例えばコンピューターを使ってオリジナル作品に着色する、背景や文章などを加えるといったデジタル操作を行い、できた作品は無許可の派生作品です。
最後に、人やブランドを写真に撮る時に伴う問題について。人の写真ではプライバシーの権利、未成年の保護などの問題が含まれますが、何より重要なのはその写真をどう利用するか。例えばオートクチュールの洋服を着て宝石を身に着けたモデル、舞台衣装を着た俳優、スポンサーブランド入りの服を着たスポーツ選手などを撮影した写真。いずれの場合も商業目的である人の肖像権を使う、私的情報の流布、ある人があるブランドを支持していると示唆する、ある人に偽ったイメージを与えるといった点に問題がないか、十分な注意が必要。ブランドの場合、写真にブランドが含まれていることを禁じているのではなく、その写真の使用方法によっては、使われたイメージとブランドの権利者の間に混乱を起こす場合があります。例えば、ブランドの権利者がその写真のスポンサーになっているように混乱させること。このような行為は、写真の使用者が利益を得るためにブランドの名声を利用していると解釈することができるので不法です。より身近な例としては、個人が撮った有名人の写真をオークションにかける、ブログやサイトで流布する、Googleのようなサイトの第三者の写真を二次使用することも不法です。
権利と義務は背中合わせ。人の写真の権利を尊重し自分の写真に責任を持ち、具体的な使用方法に関して疑問があれば権利者や専門家に問い合わせ、該当する法律をよく理解してから使用することをお勧めします。