連載-8- なるほどこれでなっとく!「著作権」ファッション
スペイン知的財産事情
この原稿は、スペインと日本間の知的財産権を専門に扱う法律サービス会社であるリーガルスタジオ社の真覚久美子氏とカルロス・アバディン氏(弁護士)の著作です。
連載-8- なるほどこれでなっとく!「著作権」ファッション
No.255 Abril 2008
ファッションと著作権というと、まず思い浮かぶのが偽ブランドではないでしょうか?
スペイン政府も力を入れているので、バッグやアパレルの偽物検挙数は毎年増えており、今年3月の大規模検挙では靴・ジーンズ・スーツ・Tシャツなど45ブランドの総数23万点、2億ユーロ相当の偽物が押収されました。
これらの製品は先進国はもちろん、発展途上国や第三諸国でも販売され、今日では麻薬よりも儲かると犯罪者は考えているそうです。
以前は安かろう悪かろうで偽物は見分けやすかったのですが、最近ではオフィシャルショップで偽物が本物と一緒に並べられて販売されたというケースもあり、油断大敵です。
購入の際はオフィシャルウェブでデザインや価格を事前チェックして、価格が安い場合は避け、またオークションでの購入には特に気をつけましょう。
今日本で人気のスペインブランドはバレンシアガ、ロエベ、シビラ、ザラ、カンペールなど、一方スペインで人気の日本ブランドはオニツカタイガー、Y-3、エビスジーンズなどが挙げられます。
創造力と革新性が重要なファッションは、知的財産権に密接な関係がある分野で、デザイン画、イラスト・テキスタイル・キャラクターデザイン、型紙など幅広い分野にわたる異なった権利があります。
まず3Dのバッグデザインや2Dの服飾・テキスタイルデザインなどは、工業製品として意匠権の対象に、そして応用美術作品として著作権で保護することができます。またスペインとEUでは、これらのデザインが市場で受け入れられるか 見分ける間の一定期間、登録せずに権利を保護するシステムがあります。
ファッションはシーズンごとに様変わりしていくという特質から、中小企業や個人デザイナーの権利を守るために考えられた法律です。
最終的に人気があって長続きしそうなデザインを登録すれば、EUでは3年間、またデザインコピー防止のために出願してから30か月は保護されるというシステムもあります。
アパレルメーカーなどに勤務するデザイナーの描いたデザイン画は本来作者に帰属しますが、実際には給与を代償に会社側に譲渡するように決められている場合が多いようです。
フリーのデザイナーが会社に依頼されて起こしたデザインには作者にデザイン画の権利や服についての意匠権がありますので、契約書でこれらの権利が誰に帰属するのかをはっきりさせることが重要です。
一方、特許にできる分野としては、テキスタイルの製造技術などがその良い例で、これらの権利は他社とライセンス契約をしてロイヤリティをもらうことができますし、独自に開発した市場調査・生産および販売戦略などのコンピュータープログラムは、世界を制覇するブランドメーカーにとって特許化することのできる大切な企業秘密と言えるでしょう。
例えばアパレルメーカー、「ザラ(ZARA)」はスペイン版トヨタ生産方式と呼ばれる独自のシステムを生み出し、これはアメリカの複数大学で研究対象になるほど独創的で、その結果オーナーのオルテガ氏は一代にして世界長者番付の8位に輝きました。(フォーブス2007年)
著作権法で守られる著作物としては、デザイン画、イラスト・テキスタイル・キャラクターデザイン、型紙などがありますが、スペインではいずれも独自に創造されたものであることが証明できれば自動的にそして瞬時に権利は保護されます。
一方、マンガやアニメのキャラクターがTシャツにプリントされ量産される場合の原画は著作物ですが、プリントされたTシャツは二次的利用になるので、たった1枚でも著作者の許諾が無くては製作できません。
これらの偽物を買わないようにするには、
コピーライトを確認する。
キャラクターのつづりを確認する。
一般的に偽物のプリントは黄色とオレンジ色の発色が悪いので注意する。
目や髪の色を変えるなど、イラストの一部を変更してあることが多いので注意する。
素材・プリントの品質が悪いので注意する。
といった点をチェックすることが大切です。