【中国専利ニュース】中国で過去最大の専利侵害訴訟、損害賠償請求額は160億円!
中国で知的財産権保護の気運が高まる中、知的財産権の侵害に係る損害賠償も数千万元レベルに達することが珍しくなくなっている。
しかし、そのような流れの中でも桁外れの約10億元(約160億円)の損害賠償を求めた「電源タップ」に関する専利権侵害訴訟が注目を集めている。
(※「専利」・・・特許・実用新案・意匠を含む知的財産の総称)
2019年3月9日付の毎日経済新聞によると、原告は安全タップ等の製造を手掛ける江蘇通領科技有限公司(以下、通領科技)。
2000年代半ばから米国をはじめとする海外市場に進出し、海外で数々の特許侵害訴訟に勝訴したことでも知られている。
被告は同業の公牛集団股份有限公司(以下、公牛)。電源タップに関しては中国トップクラスのメーカーで、現在はLED照明などの製造にも事業を拡大している。日本ではあまりなじみがない会社かもしれないが、それなりの大手同士の訴訟である。
今回通領科技が公牛を相手取って起こした訴訟は10件で、今年1月と3月にそれぞれ5件ずつ審理が開始されている。
訴訟は安全タップに関する専利に係るもので、公牛が自社の製品に通領科技の特許(専利番号:ZL201010297882.4)及び実用新案(専利番号:ZL201020681902.3)を使用したことを権利侵害としている。
損害賠償請求額は9.99億元(約160億円)だ。
米国では安全タップの関連基準が2012年に施行されており、通領科技もこれに係る専利を出願していた。
中国では2017年に初めて安全タップに関する国家標準が制定されたため、通領科技も国内のタップの危険防止用シャッターについて研究を始めたところ、公牛が通領科技の専利を無許可で使用していることを発見したとのことである。
請求額もさながら、今回の訴訟が注目されているもう1つの要因は、公牛がIPOを控えていることである。通領科技の董事長は、公牛の上場を阻止する意図はないとコメントしているが、公牛にとって、今このような巨額の権利侵害訴訟に巻き込まれるのが大きな痛手となることは想像に難くない。また、今回の約10億元という損害賠償請求額は公牛が開示したIPOの目論見書内の財務データを元に算出したと見られている(公牛の年間純利益額に相当)。
専門家は、「公牛のような業界大手なら自らも大量の専利権を有していることが殆どなので対抗する手段はあるはずだが、専利がらみの訴訟は長期化することが多いため上場に影響しないような対応策を採るのでは」と語っている。
(2019/3/22 日本アイアール株式会社 A・U)