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第3世界への損害賠償

第3世界への損害賠償

本日(08年1月21日-日本時間22日)、カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)のリチャード・ノガード教授(Prof Richard Norgaard)率いるチームが、金持ち国が貧乏国に与えた生態環境上の損害(environmental damage)を見積もったレポートを米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States)発表した、とイギリスのガーディアン紙が報じている。

調査対象となった金持ち国は米国、英国、そして日本の3国であり、対象の第3世界の諸国がどこまで含まれているのかは記事からは不明だが、与えた損害の総額は、現在第3世界全体の借金1.8兆ドル(約200兆円)の額を超えるものであるという。

金持ち国が自分達の豊かな生活を維持するために、第3世界の生態環境を破壊してきたことは既によく知られているが、今回の調査は次の6分野に絞って見積もられたという:
温室ガス排出(greenhouse gas emissions)、オゾン層破壊(ozone layer depletion)、農業、森林伐採(deforestation)、魚の取りすぎ(overfishing)、マングローブ湿地帯をえびの養殖場に変えたこと(converting mangrove swamps into shrimp farms)。これらはいずれも、われわれ日本人には耳が痛い事項だから、調査対象に挙げられたことに文句は付けられないだろう。

私はこのブログの場で、日本は世界の石油の6%を消費しているから地球温暖化・気象異変に6%の責任があると書いた記憶があるが、今回の報告のように、ありがたくもかしこくも金持ち国の一人として名指しで挙げられると、これはヤバイ。石油消費の率で割ると、この悪名高き3国の責任は米国7、日本2、英国1といった割合になるだろう。もし、200兆円の損害を賠償しろと世界の裁判所で判決が出されたら、200兆円の2割、40兆円を拠出しなければならない。年間の国の税収と同額であり国家予算の半分という巨額になる。

さあ、どうする。
国のお金はこれまでの20年間で永田町と霞ヶ関のどら息子たちが全部ギャンブルですってしまったので国庫は空っぽである。ということは、金持ち国、実態はスッカラカンであるからお金で賠償金を払う余裕は無いことになる。

あるのは「知恵」だけである。
自然エネルギーを電気に変える技術から漏水を防ぐノウハウまで、マグロの養殖から水が少なくても育つ作物栽培技術まで、森林を回復するシステムからCO2の排出を抑える技術まで、ありとあらゆる技術とシステムとノウハウと技能を総動員して、それらを文書(英語で)にまとめ、ライセンス料を取らず、現地での技術指導も無償で提供するしか賠償の方法は無いのではなかろうか。私企業が無償で行うのは無理だから少なくとも開発投資と経費分ぐらいは政府に買い上げてもらう(税金を使う)ことになろう。国立の大学や研究機関はもちろんこれまで税金で研究してきたのだから、これは無償提供となろう。

われわれ日本人は、第3世界の犠牲の上で豊かな生活を維持してきたのであり、その生活のために気象異変を引き起こす一端を担ってきたのだから、償いはしなければならない。

60歳を過ぎて定年退職された皆さん。東京の下町探訪とか温泉めぐり何ぞでのんびりされていては困るのです。蓄積してきた技術・ノウハウ・技能を全部出して、償いのために、そしてこれからの世界のためにもう一肌脱いでいただかないと困るのです。ホンマ、オンセンメグリ、ドコロジャオマヘン。

(08.01.22 篠原泰正)