連載-14- なるほどこれでなっとく!「著作権」 インテリアデザイン
スペイン知的財産事情
この原稿は、スペインと日本間の知的財産権を専門に扱う法律サービス会社であるリーガルスタジオ社の真覚久美子氏とカルロス・アバディン氏(弁護士)の著作です。
連載-14- なるほどこれでなっとく!「著作権」 インテリアデザイン
No.268 Junio 2009
インテリアデザインと一口に言っても、その分野はとても幅広く、例えばイサム・ノグチの照明器具や庭園デザイン、内田繁の山本耀司(ようじ)ブティック一連やメトロポリタン・モントリオール美術館などに永久保存されているさまざまなコレクション、ハビエル・マリスカルによる愛知万博スペイン館内の空間と展示デザイン、フィリップ・スタルクのエリゼ宮内のミッテラン大統領専用室インテリア、テレンス・コンラン卿のハビタやコンランショップ、仁木洋子のトヨタ自動車のモーターショウブース、草間彌生がこの夏ラ・ビレット公園で行ったフランス初の大規模インスタレーションなどなど。
これは映画と並んで知的財産権と深いかかわりのある分野で、単にそのデザイン製図だけではなく、グラフィックデザイン、模型制作、必用な技術の適用、家具の素材やデザイン・その創造や利用の知識、色彩知識、照明技術、庭園、舞台、美術などさまざまな分野が関係しています。当然のことながら一つのプロジェクトにインテリアデザイナーと建築家他様々なプロが共同で仕事をするケースもあります。
もしも自宅のインテリアデザインを依頼したら、デザインにはたくさんの要素がありますがその中にはきっと我が家だけのアイデアがあるでしょう。このような権利の所在を明確にすることも大切です。スペインでは一般的にインテリアデザインの発注契約書に権利のことが書かれています。またこのようなインテリアデザインはプロジェクトごとにデザイン専門家の同業組合によって保護されていて、権利を明確にし、マネを防いでいます。しかしインテリアデザインの権利の保護が広範囲にわたることは明確で、芸術的な作品であればデザイナーの著作権が適用される他にも、他社によりデザインされた家具の工業デザイン権、プロジェクトデザインに使用された企業のロゴの商標権や、特許権によって保護されるものもあるでしょう
いろいろな権利がかかわっている例として、ショーウィンドウのデザインで家具や置物を使った場合。インテリアデザインは自分でしたオリジナルでもその図面を登録するには、使用した家具などの個々のコピーライトを確認し、写真撮影や家具の複製をすることに問題が無いか、事前に確認する必要があります。そして該当するコピーライトを図面に記入して、何が自分のデザインで、何が自分に属さない権利であるかを明確にして登録をしなくてはなりません。
プロジェクトの模倣やコピーは残念ながらよく起きる問題で、多くの場合その問題点は、すべての創造者は他の創造物にインスピレーションを受けているというところにあり、どこまでがインスピレーションで何がコピーか細かく検討しなくてはなりません。それは、前世紀の何かと現代の有名家具店のカタログを参考にするのでは、全く意味合いが違うからです。
一方、『インスタレーション』と呼ばれる現代美術の分野は、ある特定の空間にオブジェや装置、光などを用いてその空間全体を作品として表現する芸術で、前述したような条件をかなえる必要は無く、やはり空間をデザインした作品ではありますが、この場合は著作権で保護されます。
科学的、芸術的、文化的な側面はインテリアデザインにおいて重要なかぎになることがあります。それは例えばヨーロッパのCE認証のように、使用する製品の安全面に注意することはもとより、身障者対応、自然環境に関する規則などをはじめとした、国ごとに決められたさまざまな法律に従ってデザインしなくてはならないからです。インテリアデザインにおいて健康と生活の質は重要な2つの軸。このような配慮はますます重要になってきます。
私たちの日常をとり囲むインテリアデザイン。快適で美しく、機能的な空間は、生活にクオリティを与えますが、また社会の仕組みやコミュニケーションにも大きく関係し、身体的・精神的・心理的な健康を求めることにもつながります。身近なだけに大切にしたいものです。