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連載-22-最終回 なるほどこれでなっとく!「産業財産権」 不正競争防止法

スペイン知的財産事情

この原稿は、スペインと日本間の知的財産権を専門に扱う法律サービス会社であるリーガルスタジオ社の真覚久美子氏とカルロス・アバディン氏(弁護士)の著作です。

連載-22-最終回 なるほどこれでなっとく!「産業財産権」 不正競争防止法

No.269 Julio 2009

産業財産権の最後にご紹介するのが、スペインでは不公正競争、日本では不正競争防止法と呼ばれる権利で、日本の法律では「事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」とあり、経済産業省の管轄、スペインは法務省です。

具体的には市場競争が公正に行われるように、商品表示・著名表示・営業表示・高品品質や原産地を不法に表示したり、商品形態やマークを不法使用した粗悪品や模倣品を取り締まる、営業秘密やドメイン名、競業者の誹謗や中傷をめぐる争いを取り締まるための法律で、消費者・競業者・市場を守ります。

不正競争防止法では、保護する対象に対して具体的な行為の禁止事項を定めることで、信用の保護など、商標権、商号権、意匠権等では十分に守りきれない範囲の形態を、不正競争行為から保護することができます。

例えばデッド・コピー。日本では最初に販売された日から3年以内の他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡・貸し渡し・譲渡や貸し渡しのための展示・輸出・輸入を行う行為を禁じていて、意匠登録や商標登録をしていない場合でも、実際に商品を発売し、一定の条件を満たす場合には不正競争防止法違反を主張して保護を受けることができます。このことは侵害を見つけたら直ちに訴訟を起こせるというメリットがあると言えるでしょう。従って、絶対的な効力を持つ産業財産権と、効力が相対的ではあるけれども、産業財産権で保護できないものを保護できる可能性がある不正競争防止法の両方で訴訟を起こすことや、両者を使い分けることも可能です。

不正競争防止法は日進月歩のIT時代への対応を行い、無形の技術・ノウハウ・アイデアの保護に重要性をおき、年々改正されています。デジタルコンテンツのコピー管理技術やアクセス管理技術を無効にすることを目的とする機器やプログラムを提供する行為を禁じる法律が適用された判例では、任天堂とゲームソフトメーカー54社が、違法に複製されたゲームソフトを「ニンテンドーDS」で使えるようにできる機器を扱う5社に対し、不正競争防止法に基づく輸入・販売の差し止めを求めた訴訟の判決が東京地裁であり、裁判長は「被告が販売した機器により、原告側のソフトの販売が邪魔され、営業上の利益を侵害された。原告側の訴えには理由がある」との判決を下しました。一方、任天堂イベリカはコンピューター関連製品を販売するチェーン店による被害を通報、スペイン警察は今年2月に複数の地方にある15の店舗を捜査し、マジコン1150個を押収しました。また55月には任天堂とソニーの訴えによりスペインの知的財産権侵害特捜部・地方警察などがゲーム販売を行う大手フランチャイズ2社のマドリッド、セビーリャ、バリャドリッド、マラガ、サラマンカ、レオン、ラ・コルーニャにおける計22店舗で一斉取り締まりを行い、92万20000ユーロ相当の3万点を押収した件は、スペインで同様に不正競争防止法を適用するための一時措置です。

不正競争防止法は、広い権利形態を保護することから、今日日本における知的財産訴訟の約1/4近くを占めるに至っており、またスペインでも経済恐慌に伴い、企業間の不公正競争に該当する訴えが今年の前半だけで数倍に増えています。

販売マニュアルや設計図などの営業秘密の流出などは年々国際化しており、在職時に得た情報を退職後に漏洩(ろうえい)する行為も不正競争防止法で取り締まられます。たとえ本人に誰かに危害をもたらす意思が無くても、むやみに社内情報などをネットで公開したりすると大変なことになるかもしれませんからお気をつけて。

長らく続きましたこの連載も今回が最後、ご愛読ありがとうございました。

スペインと日本間の知的財産権を専門に扱う法律サービス会社
リーガルスタジオ    info@legalstudiosj.com